住宅内の壁と床の境目を覆うように設置する部材「巾木(はばき)」。巾木は日常生活で意識することは少ないものの、多くの住宅に設置されているものですが、巾木という言葉を聞いたことが無い方もいるのではないでしょうか。注文住宅の新築やマンション・戸建てのリノベーションの経験があれば、打ち合わせで話題に出た記憶がある方も多いでしょう。
巾木にはどのような役割があり、なぜ設置する必要があるのでしょうか。また、巾木を選ぶ際にはどのようなことに気を付けたらよいのでしょうか。巾木の役割や選ぶにあたってチェックしたいポイントも解説します。
目次
1. 巾木の役割とは?
2. 巾木を選ぶポイント
3. 巾木はどうしても必要?
4. 巾木 まとめ
巾木の役割とは?
住宅に巾木はどのような目的で設置するのでしょうか。なぜ住宅に巾木が必要なのか、主な役割を紹介します。
巾木の役割1―壁と床の隙間をカバーする
床と壁の境目は、施工の際に数ミリ程度の隙間が生じることがあります。また、木材をはじめとする住宅の部材は温度や湿度の変化によって伸縮します。ぴったりと施工すると床鳴りやたわみの原因となりやすいので、伸縮を見越してあえて隙間を設けることもあります。
ただし、床と壁の隙間をそのままにしておくと、ごみやほこりが入り込んでしまったり、隙間風が入ってきたりすることがあります。上から巾木を設置することでそうしたリスクを軽減し、隙間があってもきれいに隠すことができます。
巾木の役割2―衝撃を緩和する
住宅内で巾木を設置する壁際はごみやほこりが溜まりやすい場所です。壁際に掃除機をかけたりモップや雑巾を使用したりすると、ぶつかって傷や汚れが付いてしまったり、壁紙が剥がれてしまったりすることもあります。小さな子どもがいる場合やペットを飼っている家庭であれば、ダメージを受ける機会がより増えるでしょう。巾木を設置することで、傷や汚れが付くことを防げます。
巾木を選ぶポイント
住宅に巾木を設置する必要性は理解したものの「どのような基準でどの巾木を選んだらいいのか分からない」という方も多いでしょう。ここでは、巾木を選ぶときにチェックしておきたいいくつかのポイントを紹介します。
巾木を選ぶポイント1―材質
巾木にはさまざまな材質があります。安価で施工しやすいため、多くの住宅で用いられているのが、塩化ビニル素材の「ソフト巾木」です。ソフト巾木はやわらかな質感で、比較的薄めの形状で、水に強い材質なので、水回りでもよく採用されています。
「木巾木」は、名前の通り木製の巾木で、木のあたたかみや風合いを楽しめます。無垢材による木巾木であれば、自然素材ならではの経年変化も感じることができます。木巾木には厚みのある製品が多く、床材のフローリングに合わせた色・材質のものがよく使用されています。
木巾木と似た仕上がりで、より豊富なラインナップから選べるのが「MDF巾木」です。MDFとは木質繊維を主原料とする成型板のことで、カラーボックスなどで馴染みがある方も多いでしょう。高級感は木製に敵いませんが、厚みやカラーなどのバリエーションが豊富なうえ安価なため、用途に合わせて気軽に使用できる巾木です。
部屋をすっきりと見せたい、スタイリッシュに仕上げたいという方におすすめなのがアルミニウム製の「アルミ巾木」です。アルミ巾木はシンプルな形状で細めの製品が多く、壁を保護しながらも巾木の存在感を軽減したい場合によく用いられます。巾木の中ではコストはやや高めな傾向があるので、広範囲に使用したい場合は注意が必要です。
巾木を選ぶポイント2―サイズや形状
巾木は製品によりサイズが異なります。厚みが薄いとすっきりとした印象に、厚めのタイプはおしゃれなデザインの製品が多い一方で、上部にほこりが溜まりやすくなることに注意が必要です。巾木の高さの違いもポイントとなり、一般的な巾木の高さは60mm程度です。巾木を目立たせたくない場合は、薄めで高さが低いタイプを選ぶと良いでしょう。
ただし、掃除機などがぶつかりやすい場所に設置する巾木は60mm以上、ロボット掃除機を日常的に使用するのであれば100mm程度の高さがあった方が、壁に傷が付くことを防ぎやすくなります。
また、巾木のなかには、ほこりが溜まりにくいようカーブの形状にした製品や、下部にパッキンを付けてごみが入り込まないようにしている製品、掃除がしやすいように取り外せる製品もあります。用途に合わせて選びましょう。
巾木を選ぶポイント3―カラー
何色の巾木を選ぶのかによって、見た目の印象が大きく変わります。巾木の存在を強調したくないのであれば、壁の色に合わせると同化させやすいでしょう。シンプルな白の壁紙の場合は特に、巾木が目立たないように設置しやすく、すっきりと仕上がります。
床の色に合わせるケースも多く、フローリングと同じ色の巾木を選べば一体感がありますし、部屋が広く見える効果もあります。
巾木を壁や床の色と合わせず、あえて目立つ色にすることで空間を引き締める効果を狙うこともできます。建具や廻り縁(壁と天井の境目に設置する部材)などと巾木の色をアクセントカラーで合わせれば、部屋全体に統一感をもたらしながらメリハリのある空間をデザインすることができます。
巾木はどうしても必要?
よりシンプルな空間を追求するために「巾木を設置したくない」という方もいるでしょう。住宅に巾木はどうしても設置しなければならないのでしょうか。
前述の通り、巾木がないと隙間からごみやほこりが入り込んだり、掃除の際に傷や汚れが付いてしまったりするリスクがあります。原則としては巾木を設置したいところですが、床に毛足の長いカーペットを敷いている場合など、壁と床の隙間が露出していない場合には、巾木を使用しないケースもあります。
また、巾木を設置する場合でも、仕上げ方法によって巾木の存在を感じさせないようにすることができます。一般的な施工方法は、巾木をそのまま壁に貼る「出巾木(ではばき)」ですが、壁面と巾木が同じ面になるように施工する「同面巾木(どうづらはばき)」や、壁面よりも内側に巾木を設置する「入巾木(いりはばき)」にすれば、すっきりと仕上げることができます。施工コストは上がりますが、巾木の機能はそのままに、目立たないように仕上げたい場合におすすめです。
巾木 まとめ
巾木には、壁と床の隙間をカバーしたり、掃除機などがぶつかった際の衝撃を緩和して傷や汚れを防いだりする役割があります。住宅の新築やリフォームの際に内装を検討する場合、床材や壁紙など目立つ場所に意識が向きがちですが、どのような巾木を選ぶかによって部屋の雰囲気も、掃除のしやすさなど使い勝手も変わってきます。これから住宅の新築やリフォームを検討している方は、用途に合った巾木選びを意識してみてくださいね。
ラジオパーソナリティを経てフリーライターに。
住宅・インテリア・不動産分野を中心として、介護・グルメ・トラベルなどのジャンルでも執筆。
リフォームや注文住宅関連の住宅情報誌をはじめ、雑誌、書籍、新聞、インターネットなどのさまざまな媒体で取材・執筆を手掛けている。